Doll‥ ~愛を知るとき
─ あ‥いと‥?
ママ‥?
違う‥ 知らない‥
男の子はストローから口を外して、キョトンとした顔で あたしを見ている。
だけど、その幼い顔を あたしは見覚えがない。
「ぼくちゃん。ほら、おばあちゃん お話したでしょう。ママよ。」
この女性は “あいと”って子の祖母‥。
「半年も会ってなかったんやし、思い出さへんねやろ。な、愛翔。来い、パパが抱っこしたろ。」
この男の人は “あいと”って子の父親‥。
「そうやねぇ。ご近所の田村さんが言ってたわ。お嫁さんが子どもを置いて二週間もニューヨークに行ってたらしくてね、お嫁さんが帰って来た時に、子どもはママの顔を忘れてたらしいのよ。」
「田村さんとこの孫って、愛翔と同じ二歳やろ?二週間で忘れるんやったら、愛翔が思い出さへんでもしゃーないな。」
この人達、何を言ってるんだろ‥
あたし、知らない‥
こんな人達、知らない‥