Doll‥ ~愛を知るとき
 

「愛波ちゃん。」

不意に名前を呼ばれ、心臓が跳ね上がった。

振り向くと、樹が立っていた。

彼が近付いて来たことに気付かなかったくらい、あたしは動揺していた。

目を見開いたまま、返事が出来なかった。


「浩也さん、知らね?さっきから、いないんだけど‥。」


ホントのことは言えない。

だから、咄嗟に首を横に振ったけど、きっと樹の声は、彼らに聞こえてるって思った。


「そか‥。板長に呼んで来いって言われたんだけど、あの人、どこにも いないんだよな。」

不思議そうに小首を傾げて、樹は倉庫の扉を閉めた。

彼は、あたしの足元に視線を落とすと

「愛波ちゃん。これ、店に運ぶんだろ?」

そう訊いて、箱を持ち上げた。


 
< 270 / 666 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop