Doll‥ ~愛を知るとき
「愛波ちゃん。」
不意に名前を呼ばれ、心臓が跳ね上がった。
振り向くと、樹が立っていた。
彼が近付いて来たことに気付かなかったくらい、あたしは動揺していた。
目を見開いたまま、返事が出来なかった。
「浩也さん、知らね?さっきから、いないんだけど‥。」
ホントのことは言えない。
だから、咄嗟に首を横に振ったけど、きっと樹の声は、彼らに聞こえてるって思った。
「そか‥。板長に呼んで来いって言われたんだけど、あの人、どこにも いないんだよな。」
不思議そうに小首を傾げて、樹は倉庫の扉を閉めた。
彼は、あたしの足元に視線を落とすと
「愛波ちゃん。これ、店に運ぶんだろ?」
そう訊いて、箱を持ち上げた。