Doll‥ ~愛を知るとき
浩也は帰って行った。
あたしはアパートの前で、彼の車を見送った。
もう、後には退けない。
皆に迷惑を掛けてしまう。
結婚式の招待状を送った人達にも浩也の両親にも、それに浩也自身にも‥。
婚約破棄なんてことをすれば、彼を傷つけてしまう。
樹と再会しなければ‥
順調だったかもしれないこと‥
憂鬱は消えないまま、アパートの階段を登った。
ふと、夏の終わりの夜風が髪を撫でた。
とても切ない香りがした。