Doll‥ ~愛を知るとき


法律のことは、よく分からない。

だけど、訴えられて裁判なんてことになったり、多額の慰謝料を請求されたら、樹の夢を奪うことになる。

あたしが樹の夢を奪ってしまう。


─ ダメ‥

  戻らなきゃ‥


何かに突き動かされたみたい。

そっとベッドを抜け出して、ミニワンピを着た。

そっと寝室を出て、リビングルームに入った。

『ごめんなさい』

一言だけメモに書き残して、零れた涙を手の甲で拭いた。


─ ごめんなさい‥

  ごめんね‥、樹‥


朝靄の中、あたしは樹のマンションをあとに、自宅のあるアパートに向かって歩いた。


 
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