Doll‥ ~愛を知るとき


ガラスの向こうに並んだ小さなベッドの中で、愛翔は眠っていた。

授乳時間が近いんだ。

張ってくる乳房に痛みを感じた。


部屋に戻る気にはなれなくて、ずっと愛翔を見ていた。

ふと、廊下に足音が響いて来た。

スリッパの音じゃないから、見舞い客だと分かった。

背後でピタリと靴音が止んだ。

あたしは愛翔を見つめたまま、顔を上げることをしなかった。


「愛波ちゃん‥。」


予期せぬ声に胸が キュンと熱くなる。

振り返った時、あたしの瞳に樹が映った。



 
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