Doll‥ ~愛を知るとき


施設では毎月、誕生日会があった。

その月生まれの子ども達を、みんなで祝う。

個人的に あたしの誕生日を祝ってくれたのは、浩也が初めてだった。

19歳の誕生日も 20歳の誕生日も、浩也はケーキを買って来てくれた。


根っから悪い人なんていない‥

きっと、やり直せる‥


「愛翔、ケーキにかぶりつけや。思いっきり行け。」

浩也の言葉が理解出来たとは思わない。

まだ、そこまで成長していない。

だけど、まるで分かっているみたい。

愛翔はケーキに手を伸ばし、鷲掴みにして嬉しそうに食べた。

「あーくんのお顔、クリームだらけになったね。」

暴力が繰り返されるなんて微塵も思えないほどに、その夜は明るい笑い声が部屋に響いていた。


 
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