Doll‥ ~愛を知るとき
†16 愛執


「エナ、それって、愛翔くん虐待されてると同じやん‥。」

公衆電話の受話器から、歌穂の心配そうな声が響いてくる。

「もう、どうしていいか分かんないの‥。」

浩也が毎日のように愛翔に暴力を奮うから、愛翔は時々、虚ろな目をするようになった。

その目を見るのが苦しかった。

「エナ!母親やろ!体張ってでも子どものこと守りや!」


─ 分かってる‥

  でも、怖いんだ‥


浩也が鬼のような形相で怒鳴り出すと、怖くて畏縮してしまう。

愛翔を庇って、何度も殴られて、その度に

「お前の育て方が悪い!」

暴力を奮う原因を、あたしのせいにされる。


感覚が麻痺するんだ。

追い込まれることで、自分が間違っていると思い込んでしまう。

正常な判断が出来なくなっていた。


 
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