Doll‥ ~愛を知るとき
高校生の頃、玲央は一度だけ歌穂に暴力を奮った。
鼻血の跡が付いた歌穂の顔を、今も鮮明に覚えている。
「玲央は、もう暴力とか無いの?前みたいに‥。」
気になって訊いてみたのは、暴力は繰り返されるって意識が強かったから。
歌穂は、意味ありげにクスッと笑うと真実を話し出した。
あの夜、玲央に無理矢理に抱き着かれ、パジャマを脱がされそうになったのは事実。
だけど、怪我は、彼女が暴れた時に酷い転び方をしたことが原因だった。
「玲央は先生に言い訳しなかってん。殴られたって、うちがウソついたのに‥。ま、パジャマのボタンが飛ぶようなことしたんは、ほんまやけど‥。今は玲央も うちも落ち着いてるし、そんなことしたらダメになるって、ちゃんと分かってるもん。もう子どもじゃないし。」
浩也を見ていると、ココロが大人になれていないと感じる。
欲しいものが手に入らなければ駄々をこね、ワガママが通らなければ癇癪を起こして‥。
一人っ子で両親に愛情を注がれて育ったはずなのに‥。
「あたし、お義母さんに訊いてみる。」
浩也のことを知れば、何か好転させる方法が見つかるかもしれない。
歌穂と話したことで、少し前向きな気持ちを取り戻せた。
あたしは、義母に尋ねる決心をした。