Doll‥ ~愛を知るとき
何も変わらないまま、日々は過ぎていく。
状況は変わらなくても、子どもは成長していく。
『家族』と言う その繋がりだけが、あたしを引き止めていた。
愛翔は、ある日突然、歯磨きを嫌がるようになった。
宥めても励ましても、閉じた口を開けようとしない。
「虫歯になるよ!ちゃんと歯磨きして!」
嫌だと意思表示が出来ることも成長の現れなのに、その強情な一面が また浩也と被っていた。
「もう!なんでお口開けないの!虫歯になってもいいの?!」
愛翔が虫歯になると、また母親失格だと罵られる。
だから、必死だった。
ココロに余裕が持てなくて、笑わせるなんて手段は思い付かなかった。
嫌がる愛翔が泣き出して口を開けるまで、あたしは叱り続けていた。