Doll‥ ~愛を知るとき
不安も罪悪感も、ココロから取り払っていた。
愛翔のことも浩也のことも、頭から振り払っていた。
─ 今日だけは自由になりたい‥
いつも右折する場所を越えて二つ目の筋を曲がり、ゆっくりと車を走らせる。
三年前に来た時は夜だったけど、建物は すぐに分かった。
マンションの裏手に当たる場所に路駐して、あたしは車を降りた。
心臓は、さっきから脈打つ速度を緩めない。
軽く深呼吸して、入り口に向かう。
エレベーターには乗らず階段を上がり、軽く乱した呼吸を整えて、緊張に震える指で呼び鈴を鳴らした。