Doll‥ ~愛を知るとき
車の中は、ホワイトムスクの薫りがした。
あたしが使っている芳香剤と同じ匂い。
そんなささやかな偶然に、胸が熱くなっている。
動き出した車の中、助手席からフロントガラスの向こうを見ていた。
雨の日以外、樹はビッグスクーターで出勤するんだって言った。
バイクなら渋滞でも、支障は殆ど無いから。
彼は、大阪で義兄が経営しているレストランバーを手伝っている。
毎日、朝方まで働いているって話した。
「聞いたよ、愛波のこと‥。山岡さんにな。」
「え?」
思いも寄らない言葉。
あたしは、運転する樹の横顔を見つめた。