Doll‥ ~愛を知るとき
43号線を宛てもなく走り、樹は湾岸線に乗った。
前を走る車のテールランプを見つめながら、カーステレオから流れる音楽に耳を傾けていた。
「オートマはオモチャみたいで退屈だよな。愛波はオートマ限定?」
「うん。マニュアル車なんて頭がパニックになりそうだもん。」
「そっか、可愛いな。」
樹に“可愛い”って言われると、とても嬉しくなる。
ふと、膝に置いた自分の手に視線を落とした。
左手の薬指に嵌めたままだった結婚指輪が瞳に映る。
─ もう決めたから‥
樹に気付かれないように、あたしは指輪を外し、そっとバッグに入れた。