Doll‥ ~愛を知るとき
あの日、浩也との結婚を選んだあたしを樹は諦めた。
それは、あたしの意志だから‥。
「きっと、朝美さんのことだって、愛波は承知でアンタの元に戻ったはずだって‥。オレは追い掛けることが出来なかった。」
ただ、遠くから、あたしの幸せを願っていた。
樹は、そう話した。
「けど、あの時‥、愛波のホントの気持ちに気付いていれば、引き止めることをしたのに‥。」
気付けなかったことが今でも悔しくてたまらない。
そう言った、樹の哀しい声が胸に痛かった。
人のココロを完全読むことなんて不可能‥
どっち付かずなことをしたのは、あたしなのに‥
「半年前、ある人に聞いたよ。愛波が、いつも体に痣を作ってるってさ。」
「誰にや!」
「誰だって良くね?そのこと知って、オレは、もう一度、愛波に会うって決めたんだ。」
浩也に騙されて、樹の部屋から連れ戻された日、あたしは意識を失うほどの暴行を受けた。
─ ね、アンタ、殺すよ ─
初めて見た。
樹が本気で怒った姿。
そのことを思い出して、また苦しくなった。