Doll‥ ~愛を知るとき


靴を履くあたしの腕から、樹は愛翔を抱き上げた。

そして、浩也に視線を遣った。


「ね、浩也さん。ココロを動かすのは暴力じゃない。暴力で動くのは、脱け殻だけだよ。」

「うるさい!黙れ!」


浩也の怒鳴り声が響く中、樹が開けてくれたドアを通って外の空気に触れた時、長かった苦しみから解放された、そんな実感が湧いた。


「愛波、行くよ‥。」

「うん‥。」


頷きながら、また涙が零れた。

樹との別れも、すぐそこにある。



─ でも、決めたことだから‥



そう自分に言い聞かせても、切なさが涙になって、あたしの瞳を潤ませていた。


< 593 / 666 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop