Doll‥ ~愛を知るとき
靴を履くあたしの腕から、樹は愛翔を抱き上げた。
そして、浩也に視線を遣った。
「ね、浩也さん。ココロを動かすのは暴力じゃない。暴力で動くのは、脱け殻だけだよ。」
「うるさい!黙れ!」
浩也の怒鳴り声が響く中、樹が開けてくれたドアを通って外の空気に触れた時、長かった苦しみから解放された、そんな実感が湧いた。
「愛波、行くよ‥。」
「うん‥。」
頷きながら、また涙が零れた。
樹との別れも、すぐそこにある。
─ でも、決めたことだから‥
そう自分に言い聞かせても、切なさが涙になって、あたしの瞳を潤ませていた。