Doll‥ ~愛を知るとき
高速道路の上、走る車の中で二人とも無言だった。
訊きたいことは、沢山ある。
あの日‥。
あたしが刑事に連れて行かれた時、部屋の中でケータイが鳴っていた。
それからあとのことが、ずっと気になっていた。
あたしは、樹に尋ねてみた。
「あの時、アパートの前に、まだ刑事さんいたでしょ?どうやって逃げたの?」
「ん?愛波、忘れた?オレのテクがプロ級だって。」
「あ‥。」
「あの車は、走り屋やってた時と違ってオートマだからさ、ちょっと逃げんのに手こずったけど、腕は衰えてなかったな。」
あたしの記憶が戻らないうちは捕まる気は無かったと、樹は言った。
「でも‥。もし、ずっと記憶が戻らなかったら、どうするつもりだったの?」
「永遠に逃げてたな♪」
冗談混じりに答えて
「詳しいことは、向こうに着いたら話すよ。」
片手でハンドルを握り、樹は、あたしの頭を優しく撫でた。