Doll‥ ~愛を知るとき


「愛波、誰が来てもドアを開けちゃいけないって言ったよな。覚えてる?」

軽く息を乱して、樹は仰向けになった。

「あ‥、そうだった。ごめんなさい‥。」


七匹の仔山羊みたい。

ドアを開けちゃいけなかったんだ。


「もう誰が来ても開けない。いい?」

「うん。」


物覚えが悪いのは頭を強く打ってるせいだって、樹は言っていた。

きっと、入院する前のことだ。

今までにも、繰り返し言われないと忘れちゃうことが何度かあった。


あたしを見つめる樹の目は、優しい。

あたしは、その目を見ていた。


「引っ越すか‥。オレらも。」

呟いて、樹は体を起こした。


< 61 / 666 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop