年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 初めから経営サイドに就くのかと思っていたら総務に配属された。


「父は一般の新入社員と同じ扱いをしました」
「へえ。なんで?」
「後から分かったことですが、起業したころの厳しさを跡継ぎの僕にも経験させたかったみたいで」
「ふうん。だから営業も初めから一人で?」


 由也くんは大学で天文学を学んでいた。経営とも乳製品とも、まるで結び着かない分野。父親は由也くんを一から教育するつもりだったのだろう、由也くんが入社すると雑用ばかりの総務に配属した。由也くんは回りの社員から教わろうとするけど微妙な距離を置かれる。次期社長になる社長子息、短気な社長の逆鱗に触れてクビになりたくないと皆はあまり近付かない。近付いてくるのは社長に媚びたい連中ばかり。本気で仕事を教えてくれる先輩社員はいなかった。

 何とかして総務の仕事を覚えると次は経理部に異動させられた。そこでも似たようなものだったが、ざっくばらんな主任やお局社員がいて、社長子息の由也くんと言えど厳しく指導してくれた。


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