しわくちゃになったら、会いに行きます。

心の準備



 じゃあねー、という挨拶に手を振って、あたしは一人になる。


 職員室と体育館の間にある通路を横目に、あたしはコンクリートを踏みしめる。


 今日は、高校時の同窓会で、お姉ちゃんの帰りが遅い。


 お兄ちゃんに朝こっそりと予定を聞いたとき、「俺もバスケット部に顔出すかな」とぼやいていたことを思い出した。


 お兄ちゃん、いるかな。


 自然と、体育館の方へ足が向いた。




 「お、朱里! 今帰りか?」




 前方の遠いところから、聞きなれた声が飛ぶ。お兄ちゃんだ。


 あたしは見えないけど、お兄ちゃんにはあたしが見えているらしい。


 スポーツしてただけあって、目がいい。


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