Secret Rose
「ちなみに俺、Gleichenia japonicaのメンバーちゃうで。ギター弾いてるだけやで」

父のバンドは何十年も前に解散している。

「茜、何で絵里奈ちゃんに黙っててん!別に俺が親でも恥ずかしないやろ?」

「ギター弾いてるおっさんなんか、興味ないと思ってんやん。それに思いっきり日本人のくせに“アリッサム”はないわ。」

「おまっ、ボケっ、俺何歳やと思ってんねん!」

「もう40やろ」

「まだ!まだ、40や!」

「40やったら十分おっさんやん。絵里奈、父さんのこと知ってたん?」

「知ってるよ!昨日買ったGJのCDも、メインの曲はアリッサム・・・さんが作詞作曲やん」

父が喜んで、絵里奈ちゃんの手を握る。

「よう知ってるやん!絵里奈ちゃん可愛いなぁ、今度のライブ招待したるわな!」

「ほんまですか?!」

「そんなことゆうて、いい年して娘の友達ナンパして・・・ほんまにもう・・・」

母が呆れ声で横槍を入れる。

「ツルちゃんまでそんなことゆう・・・」

「はい!出来たから、絵里奈ちゃんもお食べ。パパ、邪魔やで!」

母が昼ごはんを持ってきたので、父は絵里奈から手を離し、シュンとした顔で自分の席に着いた。
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