歪んだ愛しさ故に
 
早くして早くして……

顔を伏せ、とにかくバレないことを祈りながらレジが空くのを待っていた。


それなのに………



「………豊田、さん……?」

「……」



どうしてこの男は
こんなにも観察力があるのだろうか……。

というか気づけるの?


じっと顔を覗き込んで
あたしと目線を合わせると、最悪にも正しいその名前を呼んでしまった。



「か、上沢さん……。

 お疲れ様です……」


こんなにも目が合って、無視するわけにもいかない。
仮にも会社の先輩だ。


おそらく引きつっているであろう顔で無理やり笑顔をつくり
ぺこりとお辞儀をした。
 
< 17 / 287 >

この作品をシェア

pagetop