だから私は雨の日が好き。【花の章】





「あなたが教えてくれたのよ、仕事をするのがどういうことか。自分の足で歩くことが、どれだけ不安で、どれだけ充実しているのか。あなたと一緒に仕事が出来て、これ以上に幸せなことなんてなかったわ」


「水鳥・・・」




その言葉が、俺の今まで歩いて来た人生を肯定してくれる。

自分の想うまま彼女を手に入れ、自分の想う通りに育て上げてきた。

俺はこんなにも我が儘だったのかと新しい自分に驚くことも多かったが、自由気ままに生きている父親の血を色濃く受け継いでいるのだと実感できたことも確かだ。

それを受け止めてくれた彼女にはとても感謝をしている。



グイと手を引き、元来た道を車へと向かう。

『えっ』と小さく声を漏らしたが、俺に手を引かれることに抵抗などしない彼女。

そのことでさえ『独占欲』という名の感情が溢れて嬉しさが増す。

いつからこんなに欲深い男になってしまったのか、と。

自己嫌悪を何度繰り返しても、この手を離すことが出来なかったのは俺自身だ。


ドアをすり抜けトランクへと足を向ける。

疑問符の浮かぶ彼女へ目線を向けて、俺は柔く笑った。

その顔に応えるように何とか笑顔を作る彼女を見て、小さく吹き出しながら笑った。




「ちょっと!笑うことないでしょ?」


「悪い悪い。面白い顔してたから、つい、な」


「もうっ。非道い人ね」




わざとらしく拗ねたフリをする彼女を横目に、カタンと音を立ててトランクが開く。

顔を逸らしている彼女はそのトランクの中身に気付くことがなく。

カサカサとビニールの動く音がしたのをきっかけに、俺の方へと目線を向けた。




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