だから私は雨の日が好き。【花の章】





クスクス笑いながらほんの少し潤んだ目で俺を見る彼女は、悪戯を仕掛けるような、それでも少しだけ悲しそうな顔をしていた。

そんな酷い意味があるとも知らずに選んだ俺は、やっぱり花なんて柄でもないものを送るんじゃなかった、と大きく後悔をし始めていた。


少しだけ焦った顔を見せれば『ウソよ』と楽しそうに笑う顔が見えて。

コノヤロー、と悔しい気持ちになりながらも、その顔があまりに綺麗な笑い方だったので不覚にも見惚れてしまった。


一度だけ目を瞑り、そして俺の方へと目線を向ける。

彼女が睫毛を伏せたその表情は、今も俺の一番のお気に入りだ。

出逢った頃と変わらず。

いや。

出逢った頃よりも成長した彼女そのものを表すかのように、美しく艶やかに伏せられた睫毛の影を見つめていた。




「『心に秘めた愛』って、言うのよ。私、次の会社でカズのこと秘密にしなきゃ、ダメ?」


「・・・そうじゃねぇな」


「じゃあ・・・、何?」




じっと俺を見つめる瞳は、出逢った頃から変わらず真っ直ぐ。

その奥に色々な顔を秘めているのに気付いたのは、今からもう十六年も前なのか。


小娘の顔。


大人の顔。


少女の顔。


その奥に隠れた、女の顔。


見つけた途端に掴まえたくなったのは、俺の奥に隠れていた『雄』の本能だったに違いない。




「俺の奥底にあった感情、ってことだ」


「――――――っ!!」




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