だから私は雨の日が好き。【花の章】





目を見開いて驚いた顔をした彼女を、花束ごと抱き締めた。

ガサガサとビニールが潰れる音がしても離すことが出来ず、腕の中にいる存在を確かめるようにして触れる。

触れたところから広がる熱が、此処にいることをより鮮明にしてくれた。




「・・・狡い、カズ」


「何がだよ」


「私を喜ばせて・・・泣かせて。どうしたいの?」


「此処にいろ、って言いたいだけだ」




顔を上げた彼女は目にいっぱいの涙を溜めながら、この後の仕事を考えると泣けずにいるようだった。

必死に我慢しているその顔が可笑しくて小さく笑えば。

怒ったように眉根を寄せて、俺を見上げていた。


そのおでこに優しいキスを落とすと、彼女の目から真珠みたいな綺麗な涙がぽろりと零れた。






マーガレット。

和名を木春菊という。

北アフリカ沖のカナリア諸島原産の半耐寒性多年草。

日本には明治末期に渡来。

誰からも親しまれ、好き、嫌い、好き、と交互に言いながら花びらをちぎり、恋の成就を願う恋占いの花。


ギリシャ語の『Margaritaceus(マルガリーテス)』、真珠を意味する言葉で、名の通り真珠のような花びらを持つ清楚なその花。



花言葉は『心に秘めた愛』『誠実』。

そして、ピンクの花だけが持つ言葉は『真実の愛』。



恋を成就させたいと願い、恋を成就させるために贈るその花は。

まるで初恋のように純粋で。

好きになって欲しいと訴えかけるその姿は、とても凛としていて美しい。




< 291 / 295 >

この作品をシェア

pagetop