だから私は雨の日が好き。【花の章】
目を見開いて驚いた顔をした彼女を、花束ごと抱き締めた。
ガサガサとビニールが潰れる音がしても離すことが出来ず、腕の中にいる存在を確かめるようにして触れる。
触れたところから広がる熱が、此処にいることをより鮮明にしてくれた。
「・・・狡い、カズ」
「何がだよ」
「私を喜ばせて・・・泣かせて。どうしたいの?」
「此処にいろ、って言いたいだけだ」
顔を上げた彼女は目にいっぱいの涙を溜めながら、この後の仕事を考えると泣けずにいるようだった。
必死に我慢しているその顔が可笑しくて小さく笑えば。
怒ったように眉根を寄せて、俺を見上げていた。
そのおでこに優しいキスを落とすと、彼女の目から真珠みたいな綺麗な涙がぽろりと零れた。
マーガレット。
和名を木春菊という。
北アフリカ沖のカナリア諸島原産の半耐寒性多年草。
日本には明治末期に渡来。
誰からも親しまれ、好き、嫌い、好き、と交互に言いながら花びらをちぎり、恋の成就を願う恋占いの花。
ギリシャ語の『Margaritaceus(マルガリーテス)』、真珠を意味する言葉で、名の通り真珠のような花びらを持つ清楚なその花。
花言葉は『心に秘めた愛』『誠実』。
そして、ピンクの花だけが持つ言葉は『真実の愛』。
恋を成就させたいと願い、恋を成就させるために贈るその花は。
まるで初恋のように純粋で。
好きになって欲しいと訴えかけるその姿は、とても凛としていて美しい。