愛すべきフレーバー


「可愛い、すぐに赤くなるね」



必死に恥ずかしさを堪える私に、彼が追い討ちをかける。



悔しい……
いつものパターンだとわかってるのに。



「黙っててよ……、あっち向いて、見られてたら食べられないでしょ」



と言い終わらないうちに、手にしたスプーンからアイスクリームがこぼれ落ちた。



ぽたりとテーブルにできた悲しいシミ。
そこに注がれる彼と私の視線。



「ああ、もったいない」



あなたが余りにも見てるから、と言いたいのを堪えて彼を睨んだ。もちろん冗談だけど。



彼がどんな反応をするのか、ちょっと見てみたかっただけ。少し口を尖らせてみたら、彼が顔を引きつらせる。



「ごめん、布巾持ってくる」



慌てた様子で席を立ち、彼が駆けていく。そんな彼の背中を見送っていたら、少しかわいそうなことをしてしまったような気がして。



ごめんねと心の中で謝りつつ、スプーンを握り締めた。





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