嫉妬する唇
さっきより意地悪さが増した笑みを浮かべながらなお、あたしの指を噛み続けるアイツ。




………欲しい。


今のあたしはそれだけ。




見栄も体裁も貞淑さも……そんなもの今はいらない。







「キスして……」



「お望み通り。だけど、お前が欲しがったんだからな。後で取り消したいなんて言うなよ」




「そんなこと言わない 」




その瞬間、アイツのにやけた顔がスーっと真顔になった。

まるで獲物を捕らえた獣のように強い視線。





「俺の事しか分からなくなるくらい、 俺を教えてやる」




『うん』なんて返事を聞く前にアイツはあたしの唇に噛みついた。




溶けていく………



引き寄せられた身体から力が抜ける瞬間、そのたくましい腕で支えられた。


あたしの中にスルリと入ってきた舌は、それを絡めようとするあたしの舌を寸前で避ける。


もどかしくて、それを更に追いかけるあたし。




なのにすんなりと捕まってくれない。



息苦しさと、もどかしさで、涙が一筋頬を伝う。


一瞬唇を離した隙間に、あたしの顔を覗き込んで、満足そうな笑みを浮かべたアイツ。
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