クレナイの歌
寂しさを抱えたまま家へ帰る。
玄関に入るなり、朱里の足は止まった。
これ以上入りたくない。
微かに肩が震え始める。
「なん、で……」
彼女の目を一瞬で奪ったのは大きな男性用の革靴だ。真っ黒な革靴。
「お父さん……」
体が動かない。
うるさく耳に響くのは、怒声と物の壊れる音。
再びドアノブに手を掛け、外へ出る寸前だった。
ガチャリと大きな音が手元から響き、それに気づいた父が大声をあげてこちらへ向かってくるのが、解った。