クレナイの歌
「えっと……あの僕、朱里さんと同じクラスの岸辺っていいます」
岸辺の言葉を、女は吐き捨てるような笑い声で遮った。
「あぁ、あの子の知り合いかい?なるほとね。あの子なら家出したよ。
帰ってきてないの、いい?そんだけ……。
それよりも、珍しいこともあるもんねぇ。あの子に用なんて……。
友達なんて1人もいないと思ってたわ。
とにかくあたしは知らないから、話は終わりだろ?もうお帰り」
岸辺の声を無視し、ベラベラと一方的に話を終えた女は止める間もなくドアを閉め切った。
返す言葉も出ずに、ただその場に立ち尽くす。
今の女が朱里の母親か。
目鼻立ちがそっくりで、老いていたが元は美しい顔立ちだった。
間違いないだろう。
「……」
複雑な感情の中でも冷静を保つ。
ますます朱里の傍へ行ってあげたい。
今日も、あの丘にいないのだろうか。