クレナイの歌
電車が過ぎ去る。
すると、止まっていた時が再び廻り始めたかのように人々や車のせわしい行き来が始まった。
塞ぐ手をだらりと下げ、しばらくその場で息を整えていた。
右手を見つめ、後悔の念に歪む。
あの時この手を離さなければ……
こんなことにはならなかったのだろう。
朱里に会いたい。
つい昨晩告げられた。
『引越し、決まったから』
いきなりすぎるその言葉にも動揺することはない。
こんなの聞きなれた言葉だ。