クレナイの歌
母親に頼まれて弟と二人で近場へ買い物に出掛けていた。
近場といっても線路を一つ挟んでいて、実際の所少し危ない。
「10歳の時の話。弟はまだ小学1年生だったから、自分がしっかりしなきゃってすごく思ってた」
岸辺は左手を見つめ、その記憶を確かめるようにギュッと握った。
霧はますます深くなり、どろどろな感情が増していく。
俺は右手に荷物を、左手に弟の小さな手をしっかりと握っていた。
それが何故ああなってしまったんだろう。
弟との年の差からよくお兄さん扱いをされていたけれど、年齢だけだと自分だってまだまだ全然子供だ。
弟なんか踏切も軽々潜れる背丈だった。
一瞬の出来事だったんだ……。