クレナイの歌

「はあっはあっ……あ」

木が見えた。丘が見えた。逆光に伸びる影が見えた。
紅にそまる彼岸花が見えて、それに囲まれて彼女もいた。


やっぱり……いてくれたんだ。


それだけで表情が綻ぶ。



「……遅いわよ」

ふてくされたような表情で彼女がそう言った。

「よかった。やっぱ居たんだ」

立ち止まり、息を整える。
すると朱里がいきなりボスンと彼に倒れこみ、ぎゅっと手を握った。


「え…っ」


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