クレナイの歌
いきなりの出来事に、少し照れが隠せない。
朱里が手を離す。

自分の手には小さく折りたたまれた紙が握られていた。

「それ、あたしの連絡先だから」

「あ、ああ」

驚いて、あっけらかんな言葉が漏れた。
まさか自分から教えてもらえるとは思ってもいなかったからだ。


「も、もっと岸辺のこと知りたいし……初めてよこんなの」

別れを惜しむような寂し気な瞳で、でもそれでも苦し気ではなくて、彼女はそう言った。


嬉しかった。正直に。

「俺も……」

妙にくすぐったい沈黙が、二人の間を流れる。

「クレナイの歌、来年は俺も弟に歌ってやろっかな」

岸辺の口調は優しかった。
それは自分でも驚いたくらいだ。


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