モン・トレゾール

「おまえはいつも空回りしてばっかりなんだから、人の恋愛に口出そうとするな」


相手が迷惑する、そう続けて一喝すると、彼は私にコツンと額をくっつけてくる。


「か、空回りって!! 理は二人のこと何も知らないでしょ!?」


恋人同士に戻ったかのようなこの甘い数センチの距離を離した私は、つい声を張り上げてしまった。


売り言葉に買い言葉――そんな言葉が当てはまりそうなシーン。


……だけど


「……なんか、私。大切なこと忘れてる気がする」


そうよ。私、戸田さんに理の秘密を教えて貰うって約束したのに……結局、聞きそびれて。


「大切なことって?」


「え?」


「大切なことってなんだよ」


上手く誤魔化そうと思えば思うほど、そういう時に限っていい方法が浮かんでこないもの。


明らかに様子がおかしい私を見て、彼は……諦めなかった。


「そ、そんなことより! 誰か来てたの?」


さっきから聞こうか聞くまいか迷っていたこと。


テーブルの上にのせられたお客さん用のコーヒーカップと、火をつけてすぐに消されたような長さの灰皿の中のタバコ。


私も彼もタバコは吸わないから。


少し前までここに誰か居たってことよね?
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