モン・トレゾール

「いいよ、出ても」


根負け、今の俺にはそんな言葉がよく似合うと思った。


「ホント? やったぁ!」


正座を崩して俺の胸に向かってとびかかる姿は、本当のウサギのようだ。


しかし、こんなに喜ぶなんて。あのパーティーになんか特別なものでもあるのか?


「私、雑用でもなんでもするから」


「……雑用って。そんなのやらせるはずないと思うけど」


親父のことだから、無駄に着飾らせて自分の隣にでも座らせる魂胆だろうよ。


「それから、今日のことは……本当にごめんなさい」


そんなに覚悟がいるものなのか、彼女は強く俺のスエットを握った。


「戸田さんに言われたの。今夜付き合ってくれたら……理の秘密を教えてくれるって」


……俺の秘密? なんだそれ。


「んで、分かったの? その秘密とやらが」


「……それが、教えて貰う前に……私がそのぉ」


モジモジとしながら言葉を濁らせようとする彼女の言いたいことを仕方なく代弁すると。


「ハァー、つまり教えて貰う前に”倒れた”ってこと?」


「……うっ、ごめんなさい」
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