モン・トレゾール
拓真のことを抜きで考えると、夫婦喧嘩と言えばそうなるのかもしれない。
そんなやり取りをしていると、部屋の中のデジタル時計が0時を表示しようとしていた。
このところ、コイツにバレない程度に休日を返上してアメリカの……アイツの病院まで足を運んでいたからか情けないが完全に疲れが溜まっている。
クソ親父があんなふざけたパーティーなんか企画したせいで、こっちは休む暇もないだけ働かされてるし。
「愛莉――俺、もう限界」
そう耳元で囁いてベッドへ向かおうとする俺の前で、彼女はこれ以上にないくらい顔を真っ赤に染め上げていた。
「おまえ、熱でもあるんじゃないのか?」
「……熱なんてない、多分。うん……だ、大丈夫よ」
額に手をあてる俺に対して、急に逃げ腰になる。
「そ、そうだ! 私、お風呂入ってないから」
そう言っては慌てて自分の部屋へとバスタオルを取りに行く彼女の姿に、自然と首を傾げてしまった。
ウサギみたいにか弱いように見えて、気まぐれで掴みどころがなくて中身はまるで猫だな。
そんな風に自分なりに彼女を分析をしつつも、疲れのピークを迎えた俺は彼女の不思議な行動を放置してそのまま寝室のベッドの中へと潜り込んだ。