モン・トレゾール

彼と初めて出会ったのは大学4年の冬。


まだ内定すら取れていなかったその時期に、元カレにどうしてもお金が必要だからって騙されて、頼み込んで働かせて貰った叔母さんのお店で初めて会った。


叔母さんのお店はそんなに大きくないけどそこそこの固定客がいて。


そんなお客さん達の名前を覚えるだけで精一杯だった。


当時、お店のナンバー1だった茜(あかね)さんって人は、自分のタイプでお客さんを選んでるみたいなところがあって。


そのヘルプで入った席に座る彼を見て。一瞬で、ああ、この人絶対遊んでるなって――そう思った。


あの頃付き合っていた彼氏は誰にでも優しくて、とても人当たりがいい人だった。


だからかな? 当時の私としては結構長く続いた方だと思った。束縛もしないし、私から話さなくてもよく喋るしで一緒に居てとても楽だった。


だけど浮気癖は本当に酷くて、何度目を瞑っても同じことを繰り返す一方でその度に土下座をしては謝ってくる日々。


それでも最後には私のところに戻ってくるって信じてたバカな自分。


それなりに楽しい思い出なんかもあったはずなのに、今思い返しても最低最悪な別れのシーンしか浮かんでこない。

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