モン・トレゾール

最初はゆっくりと唇に触れるだけのキスを落とした。


絡めた指に力を入れると、そのまま首筋に痕が残るくらいのキスを続ける。


それでも起きそうにない彼を目の前にして、自分の気持ちだけが昂ぶってしまって。


きっと、今自分を抑えこんでしまったらこの先に進めなくなってしまう。


昨日とは違うラベンダー色のネグリジェ。


その細い紐を外すと、スッと冷たい空気が肌に触れる。


ベッドの中に潜り込むように湯冷めしてしまいそうな自分の身体を彼に重ねると、もう片方の手を彼の服の中に忍ばせた。


素肌に触れているのは背中だけなのに。


服越しに彼を抱き締めるただけで、その体温だけで落ち着ける自分がいる。


彼がこのコロンを好きだって言ってくれるみたいに、私も彼の香りが大好きなの。


だから、そろそろ……背中に腕を回していつもみたいに優しく抱き締め返して欲しい。


肌触りのいいスエットに顔を埋めると、彼の心音がとても心地よかった。


寝てる彼にこんなことまでしちゃうなんて、私って結構重い女なのかも。


この人のことを、好きになりすぎてる自分が怖い。


結婚してるからって100%相手のことを信じられるかって言ったらそれは別。


どんなに愛してるって言われても、人の気持ちっていつどんな形で変わってしまうか分からないもの。
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