モン・トレゾール

*

――ガタン


手に掴んだはずのタオルが二重に見える。


グラッと前に倒れそうになると、目の前にあったドアに手を置き身体を支えた。


昨日の疲れはダルさとなって今日に残ったようで、モヤっとする頭を起こすため起きがけに42度の熱いシャワーを浴びた。


「おい、シャンプー切れそうだけど」


「……うん、足しとく」


寝室とリビングの間でのそんなやり取り。


今朝の愛莉は珍しく機嫌が悪い。


普段は俺より寝起きが悪くて話しかけても反応が薄いくせに。


今朝俺が目が覚めた時には既に着替えていて、ムスッとしながら部屋を出て行った。


カウンターの上に黙々と皿を並べる彼女。


一切の会話がないままで、テーブルに朝食が準備されていく。


フーっと息をつき重い身体をソファーに落とすと、目頭を押さえ左右に頭を振った。


疲れていたせいからなのか、昨夜の夢は最悪だった。


夜の砂浜で抱き合う二人。あの情景は――まるであの日を巻き戻して見ているかのようだった。
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