モン・トレゾール

ズキズキと痛みだす頭痛の原因は、昨日の……アイツのせいだと思った。


昨日アイツが大事そうに抱えながらマンションまで愛莉を連れてきた時、また始まるのかと思った。


まるで決まっているかのように、俺と彼女が繋がった糸の先には必ずと言っていいほどアイツの存在がある。


今まで何度それを呪ったか分からない。


フランスへ海外勤務になった4年間、俺は一時(いっとき)も彼女の存在を忘れたことなんてなかった。


だから、日本に戻ってから彼女の側に他の男が居ると知った時もそいつから彼女を奪える自信はあった。


芳沢直人(よしざわなおと)、そんな名前だったと思う。


俺と千晶の仲を誤解して、別れたはずの芳沢を選んだ彼女を許せなかった。


瞳から零れ落ちるくらいに涙を溜め、必死に抵抗する彼女を無理矢理抱いたんだ。


芳沢の時に散々後悔したというのに。


あの日――目の前で背伸びして拓真にキスをする彼女の姿に、俺は芳沢の時以上に自分を抑えることが出来なかった。
< 139 / 147 >

この作品をシェア

pagetop