モン・トレゾール
「ハーイ、理君。食べますよぉー」
「……お前、わざとだろ」
布団に包まったままの彼の反応が、からかっていてとても楽しかった。
喧嘩してもいつも謝るタイミングをくれるのは彼の方で、中身が子供っぽい私はこの人に負けてばっかり。
だから、こんな時くらいしか優位に立てないんだもん。
「食べさせてあげるから、あーんしてくださーい」
「……」
シーンと急に静まり返る寝室。
……あれ? 無反応? ちょっとやりすぎたかも――そう思うと恐る恐る毛布の端を引っ張ってみた。
「うるさい」
ドキッとしたのは一瞬で、背中に回った彼の腕に引き寄せられるとバランスを崩してそのままベッドの角へと自分の膝をぶつけてしまった。
「……ちょ、いッ……たぁい……びょ、病人なのに、どこにこんな力があるのよ!」
反撃ともとれる彼のこの行動には、流石に……可愛い! なんて語尾にハートをつけて言えるはずもなく。
ベッドに腰をかけるような形で背中を丸めて膝を擦っていると、今度は私の肘がお盆にぶつかって……
「え、ウソ!?」
お粥はセーフだったけど、彼の大嫌いな梅干しが無残にもコロコロと床へと転がり落ちてしまった。