モン・トレゾール
肯定も否定もしない戸田さんの後ろでは、年配の夫婦が仲睦まじく演奏に耳を傾けている。
このお店は、日替わりで演奏者が変わるのか。
今日のサックス奏者は、この前の人とは違ってリードの硬さが合っていないように感じた。
「随分仲良さそうに話してるのね、遼」
その演奏者を覆うように私の前に現れた女性は、横に並んだ戸田さんよりもずっと年上のように見えた。
「――この人、新しい彼女?」
こうして二人が並んでみると、お似合いなのはお似合いなんだけど。
人を見た目で判断するのもなんだけど、かなりプライドが高そうに見えちゃう。
世の中には”似た者同士”って言葉もあるけど……この人が、戸田さんの元カノなの?
「初めまして、高宮梨花(たかみやりか)です」
私に対して牽制(けんせい)しているのか、微笑みながら自己紹介をするその瞳にはどこか威圧的なものを感じてしまう。
「……えっと、戸田さん?」
ここで自分も”初めまして”なんて返したら、どんな誤解を生むか分からない。
そう思った私は、とりあえず戸田さんへと救いの手を求めた。