銀盤の国のお姫様
序章 銀盤の国のお姫様

 真っ白な雪野原の中に、凍った池がある。

 池と言っても、水深は浅く、三十×六十メートルほどの大きさだ。

 氷にそっと触れるだけで、銀盤の国の姫は魔法にかけられる。

 王子様のキスよりも、強力な魔法にかけられる。

 その威力は、“冷たい”姫の心を溶かすほど。

 氷の上にのって、最初の一蹴りで、姫は別次元に住むお姫様になる。

 姫以外の人間は、姫をこの世に戻すことができない、とてつもない魔力のかかった世界の中のお姫様になる。 

 リンクの中央に立って、全身を大きく使って、姫の身長・肩幅より大きな長方形を描く。
 きっと、姫の目の前には大きな扉が見えるのだろう。
 それを、私に示しているのだろう。

 姫にふさわしい音楽が流れると、扉を開くように腕を動かした――


 
 
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