【貴方と本当のキスがしたい。】(*ラブコスメ参加作品)
背中に緊張が走り
若干の恐怖感で顔が強張ってきた。
棚藤常務は近距離で立ち止まると
さっきより真剣な眼差しを向けて
「…妻帯者の藍原専務に片想いしても
所詮、美紅ちゃんは
秘書以上にはなれない。
本当のキスも愛情も
一生手に入れられない。」
私は言葉のナイフで
グサリと刺された。
「…わかってます…痛いぐらいに。」
素直な本音が溢れた私に
常務の顔が一瞬引き攣った。
叶わぬ恋だとわかってる…。
専務は好きになってはいけない人。
だからいつも夢の中でだけ
ルージュとグロスで潤う唇で
彼とキスを交わして
切ない妄想を抱きながら
この想いを抑えている。
「…美紅ちゃん、目を覚ませよ!!」
常務に両肩を掴まれた私は
ビクッと全身が震えた。
…えっ!?何!?
なぜ、肩を掴まれるのか
『目を覚ませ』の意味がわからない。
常務はなおも私をジッと見ながら
「…美紅ちゃん…俺にしなよ。
俺ならその艶やかな唇に
飽きるほどたくさんキスしてあげるし
たくさんの愛情を与えて溺愛する。
…専務は諦めなよ。」
私に再び告白をした常務は
ゆっくり顔を近づけてきた。