【貴方と本当のキスがしたい。】(*ラブコスメ参加作品)
…えっ!?まさか…。
全身に嫌悪感が広がる。
「…やめて下さい!!」
両手で棚藤常務の胸を押し返し
首を振りながら抵抗した。
嫌…キスを奪われるのは…。
助けて…。
頭の中に浮かぶ、私の大好きな人。
やっぱり私は藍原専務が好き…。
報われない恋でもいい。
私を必要としてくれるなら
夢の中でしかキスが出来なくても
秘書のままでも、憧れのままでもいい。
切なくても、苦しい片想いでも
貴方がくれるグロスとルージュを
私はずっとつけ続ける。
グロスをつけた唇を見て
『可愛い』と言ってくれるのなら
貴方のその綻ぶ口元が
これからも見られるのなら…。
「……助け…て…藍原…専務。」
涙目になりながら
彼の名前を呟いた時
「………美紅に触るな!!」
頭上から突然
怒りを含んだ声と共に
力強く引っ張られた私は
その声の主の胸に
凭れるように倒れ込んだ。
肩を抱き寄せられて
思わず見あげたその先には
「…良かった…間に合った。」
と、やや息を切らしながら
棚藤常務を睨みつける
藍原専務の顔があった。