【貴方と本当のキスがしたい。】(*ラブコスメ参加作品)
藍原専務の登場に
唖然となる棚藤常務と
肩を抱かれている戸惑いと
キスされそうになった寸前で
助けて貰えて
『美紅』と名前で呼ばれた嬉しさに
涙が一筋ポロリと溢れた私を見た後
常務を睨みつけたまま
「…棚藤常務。
水越美紅は俺の秘書以前に
俺にとって一番大切な女性だ。
取引先の常務であろうが
彼女に対して
馴れ馴れしく名前で呼ぶのも
デートや交際を申し込むのも
馬鹿な真似も一切やめて頂きたい。
今後このような事があれば
TF商事との取引は中止させて貰う。」
そう藍原専務は言い放った。
「…はぁっ!?」
常務は目を見開いて驚き
同じく、いやそれ以上に
…えっ!?
一番大切な女性…!?
と、彼の言葉に目を見開く私に
「…行くぞ!!」
彼はそう言って
私の腕を掴んだまま向きを変えると
引っ張るようにスタスタ歩き出した。
涙が止まったけど
戸惑いを抱えたたまま
私は彼に引っ張られて行く。
「…おい!ちょっと待てよ!」
常務の声が後ろから聞こえるものの
「…振り返るな!!」
そう一喝された。