淋しいお月様
私は、全身の緊張を抜いた。

これから、知っているひとがテレビに出るって、こんなドキドキするものなんだ――。

知っている、というか、知りすぎているひとだから、尚更。

私の――大切な恋人。

「さて、最後は、今や人気絶頂の多久美省吾さんです」

局アナが、セイゴさんを紹介する。

私はぱっとテレビに見入った。

真っ白いスタジオのソファに、セイゴさんが現れて座った。

セイゴさん――。

久々に見るセイゴさんの姿だ。

細い身体、長い手足。

困ったように笑う仕草。

私の胸の高鳴りも、絶頂だった。

セイゴさんは拍手に迎えられた。

それが鳴り止むと、局アナが、手許の資料を見て、セイゴさんにインタビューする。

「今回は、珠玉のラブソングを作ったそうですね」

「はい。一世一代のラブソングですね」

セイゴさんは、あたまを掻いて云う。

「それは……どなたかに向けられたとか」

「そうなんです。俺の、大切なひとに」

大切な、ひと――。

それって、もしかして、私のこと……?
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