お姉ちゃんの憂鬱
楽しいことはなんともすぐ終わってしまうように感じる。
それだけ楽しめたということなんだろうけど、少しもったいない。
せっかく楽しいのだから、もっとじっくり時間をかけて過ぎていってもらいたいものである。
修学旅行ももう終盤。
帰りの新幹線に乗り込むところまで来てしまった。
「忘れ物してないかー?」
新幹線に乗り込む直前に胡散臭メガネがクラスに向けてそう投げかけた。
「気づいてももう戻れないけどね」
「あ、どうしましょう」
「どうした直くん!忘れ物に気づいたのか?気のせいだから忘れなさい!」
「かーちゃん強引だな」
「京都タワーの前で写真を撮るのを忘れていました。これは一大事ですよお姉ちゃん」
「…よーし、何も忘れてないなー。ホームに移動して乗り込めー。間違って逆方向に乗るなよー」
直くんの悲痛の叫びもむなしく新幹線のホームへと移動する御一行。
最近みんなのスルースキルに感心するばかりである。
「直くん。また今度みんなで来ればいいじゃん。今から戻るってのは勇気のいる選択だよそれは」
「…また一緒に来てくれるんですか?」
「直くんが行きたいって言えば、きっとみんな来てくれるよ」
クラス全員は無理かもしれないけど、うちの班ならみんな喜んでくるだろう。
なんてったって、おもしろいことが大好きなのだから。
「それなら今回はあきらめましょう。待ってろよ京都タワー」
「うん。置いてかれちゃうから行こうか」