お姉ちゃんの憂鬱

事務室によって事情を話して来賓用のスリッパを貸してもらい、その足で数学科研究室へと向かう。


何かあったら真っ先に伝えに来いとメガネに言われたからだ。


失礼しますおはようございますと適当に挨拶をしながらメガネを指名すると、研究室に置かれたコーヒーメーカーのところで優雅にコーヒーを入れていたメガネがのっそりとこちらにやってきた。




「なにか進展ありか?」


「進展というよりは後退ですね。上履きを殺害されました」


「殺害って…」



直くんの謎の表現力には毎回吹き出しそうになるから、せめて今だけでもやめてほしい。



「…これはひどいな。スリッパ借りたか?」


「はい、今借りてきました。パコパコしてとても歩きにくいです」


「それは我慢してくれ。替えの靴とかないだろ?」


「ないです。明日から中学の時に使っていた上履きを履いてもいいですか?」


「構わないが、サイズは大丈夫なのか?」


「それは中学三年から一ミリしか身長が伸びていない僕にケンカを売っているということで解釈してもいいですか?」


「……なんかすまん」




一ミリしか伸びてないのか…

男の子って中3から高1くらいで一気に身長伸びるものだと思っていたけど、残念ながら直くんには当てはまらなかったようだ。





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