お姉ちゃんの憂鬱

「すみません、遅くなりました!」


数学科研究室の扉が開いて、誠が勢いよく顔を出した。

一応誠にも関わることかもしれないからとメガネが呼んだのだ。



「わざわざ来てもらって悪いな」


「いえ、かなちゃんの危機とあればたとえ火の中水の中」


「草の中森の中?」


「土の中雲の中あの子のスカートの中?」

「キャー!」


「…お前らな」




直くんとまどかによって突如始まったポケットのモンスターの歌に頭を抱えるメガネ。


この子たちはいつだってシリアスモードぶち壊しにかかるから困ったもんだ。



「ペット、かーちゃんが熱烈ラブレターもらったんだぞ。負けてられないな」


「じゃあ俺もラブレター書いてきます」


「なんでそうなる」


紙の無駄遣いだからやめなさい。



「で、吉岡の方も見ていいか?」

「どーぞ」



みんなの真ん中で広げた手紙は淡いピンク色でところどころに控えめにハートが描かれているなんともファンシーで可愛らしいお手紙だった。


書かれている文字は少し丸みを帯びているが整っていて読みやすい文字だ。

内容は至極端的、『こんなやり方をしてしまってすみません。あなたのことが好きです。』

それだけ。



あたしがもらったものとは大違いである。

ズバッとわかりやすい分、こちらの方が好感を持てる。



「名前がなかったら気持ちを伝えたところで意味ないのにね…」


「それもそうだね…」



さぁちゃんの呟きにまどかも同調する。折角勇気を出したのに、これではなんの意味も持たない。



「ただの自己満足だろうな」


「あーそうかもですね」





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