お姉ちゃんの憂鬱

「お前らな…」


「先生は黙っていてください。田代君。自分の口でちゃんと説明してください。」



ここまで黙っていた直くんが田代君に言った。

田代君はうつむいていた視線を上げて宙にさまよわせた。

その視線があたしや直くんに向けられることはない。




「お、おれは……三船さんのことが、好きなんです。」



またも視線を床に戻した田代君は、震える声でそう言った。



「うん…だから?」


思わず問いかけた声は、いつものあたしの声とはかけ離れて冷たいものだっただろう。


「え…いや、だから…」

「だから隠れて写真を撮った?だから直くんに嫌がらせした?だから直くんに暴力をふるった?だからあたしの友だちを傷つけた?」


「あの、えっと、違うん…」

「何が違うの?さっきの先生の話を聞く限りでは、あたしのことが好きだけどあたしと話す機会がなくなって、直くんとあたしが仲良くなって、その腹いせに嫌がらせをしたとしか解釈できないんだけど。それが違うの?」


「…そうです……」


「好きだと言えば、何をしてもいいの?」


「良くないです…」


「へぇ、良くないことだとわかっているのに、田代君はその良くないことをする人間なんだね。それってあたしにはちょっと理解できないよ。」


「そ、そうですよね……すみません、でした。」


「…それは、誰に謝ってんの?」





< 250 / 335 >

この作品をシェア

pagetop