お姉ちゃんの憂鬱
「え、あの…三船さんに…本当に、すみませんでした…」
泣きそうな震える声。
うつむいた姿勢から一切顔を上げずに謝る田代君。
「はぁ…」
そんな様子の田代君に思わずため息がでる。
「謝って済む問題じゃないとか、謝って済むなら警察はいらないとか、そんな小学生みたいなことを言いたいわけじゃないの。
もちろん謝罪は必要なことだよ。でもさ、あなたが見ている場所にあたしはいないんだよ。言いたいことがあるなら、相手の方を見なさい。あたしはあなたの目の前にいるんだから。」
そう言うと、ずっと床を捉えていた視線が初めてあたしの目を捉えた。
生徒指導室に来て、初めて田代君と目があった。
「田代君さ、あたしがどんな顔して話してたかなんて、分からないでしょ?話がしたいなら、ちゃんと顔を見なさい。じゃないと、相手の言葉の意味も分からないんだよ。」
あたしがどんな気持ちで話していたか、声だけの情報では分からないでしょうよ。
みんなは確かにイラついていたし、呆れていた。でも、あたしは。
「あたしはあなたに怒りをぶつけたいわけじゃない。反省してくれればそれでいいのさ。あたしたちにしたこと、直くんにしたこと、全部ちゃんと謝って、自分がしたことを償ってくれればそれでいい。
それなのに、田代君ときたらうじうじうじうじ下ばっかり向いて、一向にこっちを見てくれないんだから、ため息もつきたくなるってもんよ。」
下ばっかり向いていたら、お互いに伝わるものも伝わらないでしょうが。